医療的ケア児と家族の災害対策【2024決定版】

地震や台風、水害など…。災害はいつ・どこで起こるか予測できません。だからこそ日頃から防災対策が重要に。特に医療的ケア児と暮らすご家庭の場合、日常とは大きく異なる環境に困難を感じることも多いでしょう。

そこで今回は、医療的ケア児や障がいを抱えるお子さんの訪問看護を行うソイナースが、医療的ケア児とそのご家族に知っていただきたい災害対策について詳しく解説いたします。

今日から使えるチェックリストもあるので、万が一に備えて早速活用してくださいね!

 

医療的ケア児の災害準備【何を用意する?】

避難グッズは、誰でも同じ物を用意するわけではありません。お子さんがいるご家庭においては、月齢や発育状況に合った避難グッズを用意する必要があります。さらに医療的ケア児と生活されるご家庭となると、これにプラスして万全な医療的ケア物品の準備も欠かせません。

そして忘れてはいけないのが、災害準備は「持ち出す物」だけではないということ。医療的ケア物品や機器を正常に使うため、命の安全を守るために準備すべきこともあるのです。

では具体的に何を準備すべきなのか、確認していきましょう。

 

医療的ケア物品

災害時は、普段使っている医療ケア用品や衛生用品などが入手困難になる可能性が大いに考えられます。だからこそ、医療的ケア児と暮らすご家族は、日常の医療的ケアに困らない物品を万全に揃える必要があるのです。

小児訪問看護サービスを提供するソイナースがオススメする医療的ケア児用の防災物品を一覧にまとめましたので、ぜひ参考にしてくださいね!

 

医療的ケア児用 防災物品リスト
基本用品 内服薬(※1)
外部バッテリー(※2)
ポータブル冷蔵庫(※3)
衛生用品 ガーゼ
アルコール綿
消毒液
滅菌手袋
精製水(蒸留水)
オムツ(必要に応じて)
ケア別

医療用品

人工呼吸器 無電池呼吸器
加湿器
呼吸回路一式(予備)
吸引器 手動式吸引機
シリンジ
吸引チューブ
経管栄養 経管栄養材
計量カップ
接続用チューブ(予備)
血糖管理 インスリン
血糖測定用センサー
注射器
ブドウ糖(低血糖対策)
特殊ミルク
在宅酸素療法 液体酸素装置
携帯用酸素ボンベ
カニューレ
延長チューブ
低体温対策 電気毛布
カイロ
湯たんぽ

 

※1:できれば7日分以上用意して自宅と通所・通学先などに分散して置いておく、災害時どうしても不足しそうな場合は薬の種類によって1日2回の内服薬を1日1回内服にすることで内服薬がゼロにならないようにするなどの工夫も必要となります

※2:充電済みの物を用意

※3:冷所保存必須の薬剤が処方されている場合など

参考:

医療的ケアが必要な人と家族のための災害時対応ガイドブック(内閣府)

保育所における医療的ケア児の災害時対応ガイドライン(こども家庭庁/掲載元:みずほリサーチ&テクノロジーズ)

 

印刷して使える!<【医療的ケア児用 防災物品リスト】>

【基本】子連れ避難グッズ

医療的ケア物品だけでなく、命を守るために必要な避難グッズを忘れずに!

 

【基本】子連れ避難グッズ
避難用品 防災ヘルメット
懐中電灯(※4)
乾電池
携帯ラジオ(※5)
モバイルバッテリー(※5)
防災マップ
ホイッスル
マッチ・ライター・ろうそく
使い捨てカイロ
レインコート
軍手
生活用品 水(※6)
食料(※6)
衣類
下着
ブランケット
携帯カトラリー
暑さ・寒さ対策グッズ(※7)
衛生用品 マスク
体温計
消毒用アルコール
石鹸
歯ブラシ
紙コップ
ウエットティッシュ
耐熱ビニール袋
ゴミ袋
新聞紙
携帯トイレ(※6)
生理用品
オムツ(必要に応じて)
スリッパ・靴(履き物)
貴重品 現金
通帳
身分証明書
健康保険証・医療証・障害者手帳
診察券

 

※4:お子さんがいる家庭の場合、両手があくヘッドライトやネックライトがオススメ

※5:乾電池不要の手動充電式の物を用意しておくとより安心

※6:3日~1週間分×家族人数

※7:【暑さ対策】携帯用扇風機・コンパクト冷風機・保冷剤/

  【寒さ対策】防寒シート・ポータブルストーブ・カイロなど

印刷して使える!<【基本!子連れ避難グッズリスト】>

参考:災害の「備え」チェックリスト(首相官邸)

 

電源の確保

医療機器を使用している場合、災害時の停電や断線などの心配もあります。そのため万が一に備えて、非常用電源を確保しておくと安心です。

【非常用電源 例】

  • 蓄電池
  • 発電機
  • 車載用インバーター
  • 太陽光パネル など

ただし非常用電源(ポータブル電源)を購入する場合、次の点も十分に確認しましょう。

  • 対応アンペア数
  • 使用可能時間/充電時間
  • バッテリー寿命年数
  • 機械音の大きさ(静音) など

参考:医療機器が必要な子どものための災害対策マニュアル (国立成育医療研究センター)

 

自宅の防災対策

災害時は、普段お子さんが過ごす環境、寝室の防災対策も重要なポイントに!緊急時にも安全な環境を保てるよう、日頃から次の点を心がけましょう。

  • 医療備品(呼吸器の回路等)の破損に備えて、すぐに取り出せる位置に予備を用意しておく
  • 医療機器は地震や衝撃で倒れたり動いたりしないよう、滑り止めシートを敷く
  • キャスターは必ずロックする
  • 頭上に物を置かない
  • コンセントのアンペア数(規定アンペア数以上の使用は、火災の原因に)

 

医療的ケア児の避難場所【どこに避難する?】

いざ災害が起きた時、どこに避難すればいいか知っていますか?また外出していても家族がはぐれることなく、避難所に集まれるよう家族全員で地域の避難所を確認しておくことも重要です。

さらに避難所の場所だけでなく、次の点も必ず確認しましょう。

  • 避難所周辺環境(公衆電話/水路/土砂崩れの危険性 など)
  • 避難場所までの安全な経路(車いすが通れるか/障害物はないか など)

※避難当日の情報収集も忘れずに!

 

確認すべき地域の避難所

広域避難場所

大規模な災害時に、避難する場所

例:学校や広い公園など

 

一時避難所

一時的に様子を見るために避難する場所

例:公園・公民館・神社など

 

収容避難所

災害で自宅が倒壊、もしくはその可能性がある場合に、避難生活ができる場所

例:小学校・中学校など

 

福祉避難所

 障がい者や高齢者、乳幼児など、福祉的配慮を必要な人が生活する避難所

例:地域の福祉施設など

 

福祉避難所を確認すべき理由

医療的ケア児が一般の収容避難所で生活する場合、次のような懸念があります。

①衛生環境の悪化

②プライバシーの保護が不十分

③医療機器による騒音問題

 

さらに医療的ケア児の避難生活では、訪問看護師やケアマネジャーなどの地域の支援者出入りも想定されます。そのため、医療設備を取り扱うに相応しい、福祉避難所の場所を確認すべきなのです。

 

医療的ケア児の緊急連絡先【誰にSOS?】

医療的ケア児の避難では、誰かに支援を求めたり、専門家に相談したりする必要性も発生することでしょう。

そのため、災害時の緊急連絡先は一覧にまとめておくことをオススメします。災害時にはインターネット回線が使えない可能性もあるため、施設の住所も控えてください。

また電話で相談する場合には、次の点をしっかり伝えましょう。

  • 今どこにいるか
  • どんな状況にあるか
  • 必要な支援や物資

 

【医療的ケア児の災害対策】控えておくべき緊急連絡先

  • 主治医
  • 訪問看護ステーション
  • 医療機器取扱業者
  • 相談支援専門員/ケアマネジャー
  • 地域の基幹病院

またスマホの電源が切れてしまったり、破損してしまったりする可能性もあるため、家族の連絡先も控えておくと安心です。

印刷して使える!<【緊急連絡先一覧シート】>

 

救援物資を届けてもらう

  • 自宅が倒壊して準備していた医療ケア用品が持ち出せない
  • 避難が長引き、物品が不足した

このような事態が起こる可能性もあります。

万が一に備えて、別の地域に住む家族や知人に、医療的ケア物品や日常用品を託しておくと安心。避難先へ配送してもらえるようお願いしておきましょう。

また日本郵便では、災害時に必要な物や大切な物を預けて置き、避難先に届けてくれる『防災ゆうストレージ』というサービスもあります。

 

医療的ケア児の避難計画【いつ・どうやって?】

あなたは災害時、どのタイミングで避難すべきだと考えていますか?

  • 家が倒壊の恐れがある
  • 避難や津波警報が発令された など

実際の災害時には、避難のタイミングが遅いことから命が奪われた事例も少なくはありません。だからこそ、避難のタイミングはとても重要に。

なかでも医療的ケア児の場合、症状や看護・介護レベルによっても避難のタイミングが異なります。そこで必要となるのが、「災害時個別避難計画(災害時ケアプラン)」。

日々の医療的ケアや看護について相談しているケアマネジャーや相談支援専門員、訪問看護師と一緒に災害時に必要となる情報をまとめた「災害時個別避難計画(災害時ケアプラン)」を作成しましょう。

 

災害時個別避難計画(災害時ケアプラン)で考えるべきこと

  • 地域のハザードマップの確認
  • 災害時必要になる支援
  • 医療的ケア児と家族がとるべき災害レベル別の行動(避難のタイミング)
  • 移動経路

また停電でエレベーターが止まったり、浸水した場合を想定した脱出のイメージトレーニングも十分に行いましょう。また大きなお子様の場合、1人で階段の上げ下ろしをするのは難しい場合もあります。そんな時に備えて、【抱っこ具】を用意しておくと便利ですよ!

【抱っこ具 例】

  • ちょいぱ敷シート型すっぽりタイプ
  • らくちんだっこ など

さらに災害時に自力で避難することが難しく支援を必要とする場合、各市区町村で「避難行動要支援者名簿」に事前登録しておくと安心です。

 

この記事の監修医師:遠藤先生からのメッセージ

災害が大きいほど、市区町村や自衛隊による「公助」や地域の方による「共助」は期待できません。基本的に災害発生から3日間は、ご家族やご自身だけで乗り越える「自助」が基本となります。

災害時に自助する上で次の3点を、しっかり心がけましょう。

 

①自分たちが住んでいる家や地域を知る

  • 耐震性や呼吸器を置く場所
  • ハザードマップや過去の災害状況 など

②災害時に重要な物・人・場所を知り、準備する

  • 福祉避難所はどこ?どうやって行く?
  • 誰に連絡する?(医療・福祉・消防署・電力会社など)
  • 何を用意する?

③普段から個別避難(支援)計画を作成し、つながりを大切にする

  • 医療・福祉・行政・教育・公共などとの事前連絡と連携が重要!

 

【ソイナース】小児看護の現場から感じる不安

外国に比べて、自然災害が多いことから『災害大国』とも呼ばれる日本。この国で生活するからには、万全な災害対策は切っても切り離せないものです。

そしていざ非常時になると、人はパニックに陥りがち。だからこそ万全に対策や物品の用意、準備をしておくと、非常時にも焦らず的確な行動ができるのではないでしょうか。

さらに災害時は大人でさえ慣れない環境と状況にストレスを感じやすいものです。お子さんにさらなる不安を与えないためにも、事前の防災対策で冷静な判断と行動を心がけましょう。

医療的ケア児の防災対策、災害時対応について不安のある方は、お気軽にソイナースまでご相談ください。

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遠藤 雄策
【この記事の監修者】

遠藤 雄策

     

浜松市発達医療総合福祉センター副センター長
一般社団法人みらいTALK理事
浜松医科大学浜松成育医療学講座
小児科医・在宅医 専門:小児神経、在宅医療、災害医療

災害関係役職:
日本小児神経学会災害対策委員会副委員長
静岡県災害時小児周産期リエゾン
浜松市災害医療コーディネーター

その他、一般社団法人みらいTALKの仲間と一緒に 障がいのある子と家族のためのサバイバルキャンプ&防災ワークショップ を年一回開催

<ご経歴>
1998年 浜松医科大学 卒業
1998年〜1999年 浜松医科大学附属病院
1999年〜2000年 浜松医療センター
2000年〜2005年 清水厚生病院
2005年〜2007年 国立精神・神経医療研究センター病院
2007年〜2008年 浜松医科大学附属病院
2009年〜浜松市発達医療総合福祉センター現職

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