お子様の進学は嬉しいものですが、それと同時に医療的ケア児のご家族を悩ませるのが、学校の「付き添い」の課題。ご家族にも仕事や生活があるのに、付き添いを必要とされ、より自由な日常が失われている…。
そんな日本の社会問題、【医療的ケア児の付き添い】の課題と実情を、小児専門ケアリングサービスを提供するソイナースが詳しく解説いたします。
医療的ケア児に付き添うご家族の課題とは
年々増加傾向にある医療的ケア児と暮らす家族にとって、保育園や幼稚園、学校での付き添いの負担は大きくのしかかっています。
医療的ケア児の教育や福祉にご家族が付き添うことで、次のような課題が発生します。
- 仕事ができず、経済的に悩まされる
- 家族の介護や兄弟育児の時間を充分に取れない
- 精神的にも肉体的にも疲労困憊する
実際にソイナースが36名の利用者様を対象に行った「医療的ケア児の通学と学校生活」に関する実態調査でも、通学面での課題として感じることとして、「親の仕事と付き添いの調整」という回答が、45.5%もありました。
このような課題によって、ご家族の健全な日常が脅かされることはもちろん、医療的ケア児の安全な介護、育児にも支障を及ぼすことが懸念されているのです。
▼実態調査について、詳しくはこちら
『小児専門の看護師ケアリングサービス「ソイナース」が「医療的ケア児の学校生活と通学」に関する利用者調査を実施』
医療的ケア児支援法と保護者の付き添い
医療的ケア児とそのご家族が健全な日常を送れるよう、社会で支援するための法律「医療的ケア児支援法」が2021年に施行されました。
そしてこの法律によって、医療的ケア児が健常者同様に平等な福祉や教育を受けるための取り組みが行われています。その一環として、ご家族の付き添いの負担を軽減する体制づくりが進められているのです。
▼医療的ケア児支援法について、もっと詳しく
『医療的ケア児支援法』とは?目的・取り組み・リアルな支援者家族の声を解説
医療的ケア児の付き添いが必要な状況は約半数
しかし、医療的ケア児支援法が施行されて3年目の現在…医療的ケア児を受け入れる保育園や幼稚園、学校の数は充分ではありません。
さらに福祉や教育施設において、看護師の配置を進めてはいるものの、未だ登園・登校時に保護者の付き添いを必要とする施設も少なくないのです。
厚生労働省が20歳未満の医療的ケア児と暮らすご家族を対象に行った調査(※1)では、「医療的ケア児が登校や施設利用時に付き添いが必要」という回答が半数以上ありました。
(引用:厚生労働省『医療的ケア児者とその家族の生活実態調査 報告書(2020年3月)※1 』図表136)
つまり、医療的ケア児の付き添いに関するご家族の負担は、医療的ケア児支援法でまだまだカバーしきれていないと言えます。
特別支援学級や幼稚園、学校における付き添いの現状
文部科学省が2023年に調査(※2)した内容によると、医療的ケアを必要とする児童の数は、次の通りです。
特別支援学校 8,565人
幼稚園 266人
小学校 1,616人(内 特別支援学級922人)
中学校 263人(内 特別支援学級168人)
高等学校 54人
(幼・小・中・高等学校の合計:2,199人)
合計10,764人ものお子様が、教育機関に通いながら医療的ケアを必要としています。
一方で、学校等の教育機関に配置される医療的ケア看護職員、介護福祉士、認定特定行為業務従事者の人数は、以下の通りです。
特別支援学校 7,369人
(常勤2,499人/非常勤2,499人/外部委託266人)
幼・小・中・高等学校 2,321人
(常勤44人/非常勤1,438人/外部委託629人)
一見十分な人数にも思えますが、その多くが非常勤や外部委託のため、学校生活や学校行事の見守りとして、十分な職員がいるとは言えない数字です。
医療的ケア児の学校生活におけるご家族の付き添い事情
それぞれの教育機関において、ご家族(保護者)の付き添い状況は、次の通りです。
▼特別支援学校
学校生活での付き添い 338人
登下校のみの付き添い 3,835人
▼幼・小・中・高等学校
学校生活での付き添い 426人
登下校のみの付き添い 1,019人
このように教育機関に通う医療的ケア児の人数に対して、大多数がご家族の付き添いを必要としています。特に登下校時の付き添いを必要とする状況は、特別支援学校では全体の57.5%、幼・小・中・高等学校では46.3%と、その負担の重さを感じます。
実際にソイナースが行った調査では、「1カ月以上学校生活に付き添ったことがある」と回答した保護者が、全体の7割。
この調査結果から見ても、医療的ケア児の付き添いに対する支援体制が充分ではない現状が伝わるのではないでしょうか。
また特別支援学校においては、登下校時にスクールバスの送迎がある学校が全体の25.7%。それ以外では、ご家族が自家用車や公共交通機関、福祉タクシーでの送迎を行っています。幼・小・中・高等学校においては、ほとんどがご家族の送迎です。
そしていずれの教育機関においても、自宅の近くに学校があるとは限りません。送迎方法やその負担に悩まされる声も多いのです。
医療的ケア児に学校生活にご家族が付き添う理由
さらに、ご家族が学校等に付き添う理由には、次のような回答がありました。
▼特別支援学校
「医療的ケア看護職員や認定特定行為業務従事者はいるが、学校・教育委員会が希望しているため」36.1%
▼幼稚園・小中高学校
「医療的ケア看護職員が配置されていない又は認定特定行為業務従事者が配置されていないため」45.1%
いずれも大きな理由は、医療的ケアを行う人員不足です。つまり医療的ケア児支援法で取り組まれるべき支援の体制が、まだ充分に行き届いているわけではないからこそ、ご家族の付き添い負担が絶えないことが日本社会における福祉の大きな課題といえます。
またソイナースを利用する36名の保護者のうち、付き添い理由で最も多かったのが、「学校との医療的ケアの引き継ぎに時間がかかった(56.7%)」という回答でした。
つまり学校での新しい生活を始めるために、通学や日常生活といった多方面でご家族の付き添いが必要とされているのです。
医療的ケア児の付き添い課題を軽減するために〜ソイナースにできること〜
ソイナースの利用者様からも、「付き添い課題が軽減してほしい」そんなお声を多く耳にします。
だからこそソイナースでは、医療的ケアを必要とされるお子様の保育園・教育機関(幼稚園や学校)に訪問看護師を派遣するサービスを実施しています。
(※2024年時点では東京都内限定)
保育園や教育機関における訪問看護師の主な役割
- 医療的ケア
- 見守り
- 主治医との連携
- 各教育機関や市区町村の理解啓発 など
お子様の笑顔を守るため、成長を支えるため、訪問看護師がサポートいたします。
ぜひお気軽にご相談ください。
詳しくは【市区町村の保育園・学校付き添い】のページをご参照ください。
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