医療的ケア児の訪問看護に興味を持ちつつも、まずは何からすればいいのか悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。近年需要高まる医療的ケア児の看護研修は、各都道府県や医療団体、一般企業まであらゆる場所で受けることができます。
そこで今回は、医療的ケア児の看護研修の必要性やカリキュラム例、開催情報、研修後の勤務先などを詳しく解説します。
医療的ケア児等支援者養成研修について
医療的ケア児の看護については、様々な機関で研修が行われていますが、実は特別な資格や研修が必須なわけではありません。看護師免許があれば、医療的ケア児の看護をすることができます。
ただし、各都道府県では医療従事者以外の方を対象に、医療的ケア児等支援者養成研修が開催されています。
【対象者】
- 保育所・認定こども園・幼稚園等 関係者
- 学校 関係者
- 障がい児通所支援事業所 関係者
- 医療的ケア児の支援をする予定がある
- 医療的ケア児についてもっと詳しく理解したい
地域によっては看護師や保育士向けの研修を実施してる場合もあるので、医療ケア児に関する知識をを深めたい方はぜひ注目してください。
カリキュラム内容
厚生労働省では、医療的ケア児等支援者養成研修で次のような研修カリキュラムとして設けています。
以下、『医療的ケア児等支援者養成研修実施の手引き(厚生労働省)』引用
医療的ケア児等支援者養成研修日程表
科目名 | 時間数 | 内容 |
---|---|---|
1 総論 | 1時間 | ①医療的ケア児等支援の特徴 ②支援に必要な概念 |
2 医療 | 3時間 | ①障害のある子どもの成長と発達の特徴 ②疾患の特徴 ③生理 ④日常生活における支援 ⑤救急時の対応 ⑥訪問看護の仕組み |
3 福祉 | 3時間 | ①本人・家族の思いの理解 ②支援の基本的枠組み ③福祉の制度 ④遊び・保育 ⑤家族支援 ⑥虐待 |
4 連携 | 2時間 | ①小児在宅医療における多職種連携 ②連携・協働の必要性 |
5 ライフステージにおける支援 | 3時間 | ①各ライフステージにおける相談支援に必要な視点 ②NICUからの在宅移行支援 ③児童期における支援 ④学齢期における支援 ⑤成人期における支援 ⑥医療的ケアの必要性が高い子どもへの支援 |
このように医療的ケア児等支援者養成研修では、医療的ケアを必要とするお子様が日常生活に起こりうる事態を想定したケア方法を習得することができます。そのため看護研修とは違った観点で認識を深めるためにも、受講してみてはいかがでしょうか。
医療的ケア児に関する看護師向け研修の必要性
医療的ケア児等支援者養成研修で知識を深めたとしても、それはあくまで「支援」の範囲。小児への医療的ケアや看護について、臨床経験の少ない看護師にとっては不安に感じることもあるでしょう。
だからこそ実際の看護事例に沿ったカリキュラムで、医療ケア児の理解を深めることはファーストステップとして役立つのではないでしょうか。
医療的ケア 内容例
- チューブやカテーテルを使って、胃や腸に栄養を補給(経管栄養)
- 口や鼻、気管カニューレ内の痰を吸引(喀痰吸引)
- 気管切開をした部分を衛生的に保つ管理
- 糖尿病を患う患者さんに注射でインスリンを補給(インスリン投与)
- 導尿カテーテルの衛生管理や経過観察 など
医療的ケア児の看護研修|医療団体や企業等でも開催
都道府県別で行われる医療的ケア児等支援者養成研修の他、医療団体や企業が研修を開催しているケースもいくつかあります。そこで次に、2024年に開催が予定されている研修やセミナーを3つご紹介します。
一般社団法人日本小児看護学会
一般社団法人日本小児看護学会(以下、日本小児看護学会)では、eラーニングとして「小児看護スキルアップ研修」が開催されています。
開催目的は、医療的ケアを必要するお子様とそのご家族に関わる看護師の知識と実践力向上。日頃から小児看護について深く考える学会だからこそ学べることが多くあるのでなないでしょうか。
開催コースも、習得目的別に2つ設けられているので、キャリアプランに合わせて履修できそうですね。
- 小児看護の経験がない、もしくは少ない看護師向け
- 医療の必要性が高いお子様の看護にすでに携わっている看護師や保健師向け
申し込みについて
オンライン上のeラーニングなので、研修日の設定はなく、ご自身のペースで履修できるようです。ただしコースによっては、集合研修が年2回開催するとのことですので、申し込み後に日程を確認する必要はあります。
詳しくは、日本小児看護学会にお問い合わせください。
公益財団法人日本訪問看護財団
公益財団法人日本訪問看護財団(以下、日本訪問看護財団)では、小児訪問看護に携わる看護師向けセミナーの開催が予定されています。
2024年10月19日(土)
『小児訪問看護強化セミナー ~重症心身障害児や医療ケア児の成長と発達~』
2023年はオンライン開催でしたが、今年は受講者が同じ場所に集まる集合研修の開催に。プログラム詳細はまだ発表されていませんが、昨年は以下のような内容の研修が行われました。
- 在宅で行う医療的ケア技術について
- 保護者やご兄弟等ご家族のケアについて
- 医療的ケア児の通学支援について など
申し込みについて
申し込み期間:7/1(月)~10/2(水)
※定員に達し次第締切
受講料:財団会員 8,200円/非会員 18,000円
詳しくは、日本訪問看護財団にお問合せください。
ソイナース
小児専門看護師のケアリングサービス「Soi Nurse(以下、ソイナース)」では、採用面接後勤務が決定された方に研修を実施しております。
研修内容 例
研修① 社内研修(座学)
- お仕事で使用するツール
- 電子カルテの操作レクチャー
- 訪問前の情報収集方法
- 訪問マナー など
研修② OJT研修(実践)
常勤看護師と実際の訪問看護ケアを実践していただきます。
- 利用者様のご自宅に訪問もしくは特別支援学校へのバスに同乗
- 電子カルテから事前に収集した情報を元にケアの実施
お子様やご家族との関わり方を常勤看護師が確認し、今後単独での訪問を任せられるかの評価をします。
初回同行
初めてのお子様への訪問や特別支援学校へのバス同乗に、常勤看護師が同行しサポートします。疑問や不安な点は遠慮なくご質問ください。
このように医療的ケア児看護の実践に活かせる研修プログラムを用意しているため、小児訪問看護が初めての方でも安心して仕事に取り組んでいただけます。
また仕事内容は、看護師さんのスキルや経験、お住まいによってマッチングをしています。
仕事内容 例
- ご自宅への訪問
- 特別支援学校へのバスの同乗
- 学校付き添い
- 保育園や学童、放課後等デイサービスでのお仕事 など
医療的ケア児支援|看護師を求める3つのシーン
このような研修を終えた看護師には、どのようなキャリアプランが待っているのか気になりますよね。次に小児訪問看護師を必要とする医療ケアの現場について詳しく解説します。
医療的ケアを必要とするお子様やそのご家族の健やかな生活を支援するため、下記のような3つのシーンで看護師の活躍が求められています。
- 訪問看護
- 育児や教育の現場(保育園/幼稚園/学校)
- その他医療的ケア児受け入れ施設(児童発達支援施設/放課後等デイサービス)
では、それぞれ具体的にどのような役割が求められているのか、詳しく確認していきましょう。
訪問看護
訪問看護は、医療的ケアを必要とするお子様のご自宅で日常生活に欠かせない医療的ケアや看護の支援を行います。他にもご家族のフォローや相談にのるなど、お子様とご家族が安心して日常生活を送るための介入をしていきます。
また訪問看護の場合、目の前で向き合うべきは、1人のお子様とそのご家族です。そのため、病院という大きな枠で複数名に対応するのではなく、そのお子様それぞれの病状や性格、成長と一人ひとりあった支援を行います。
これによって、病院看護では体験できない絆や成長過程を見届けられることが、小児訪問看護のやりがいと言えるでしょう。
ソイナースでも訪問看護師を募集中
ソイナースではご自宅での訪問看護だけでなく、医療的ケア児・障がい児の保育園や学校でのケアなど、日常生活のトータルサポートができます。このように多岐にわたって小児訪問看護ができるサービスはまだ少ない ので、小児看護の経験がある方であれば、特に強いやりがいと経験につながると好評です。
研修や仕事内容についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にお問合せください。
育児や教育の現場(保育園/幼稚園/学校)
医療的ケアを必要とするお子様は、日中の多くの時間を過ごす保育園や幼稚園、学校でも、絶えず医療的ケアを行う必要があります。そのため小児看護師は、保育士や担任教師と情報を共有しながら、お子様が健やかな日常生活を行うため必要な支援を行います。
その他医療的ケア児受け入れ施設
保育園や幼稚園、学校の他にも、医療的ケア児が通う場所には看護師の存在が欠かせません。ここでもご家族の代わりに、医療的ケア児の処置や健康管理を行います。
- 児童発達支援施設
- 放課後等デイサービス など
ただし、これらの施設に通うお子様の年齢層はそれぞれ異なります。そのため成長に合った適切なケアが求められるのです。
医療的ケア児の知識を高めて小児看護師の道へ
厚生労働省の調べによると、在宅での医療的ケアを必要とするお子様は、約2万人と言われています(※1)。一方で医療的ケア児の看護ができる看護師は不足しているのが現代の課題に…。
だからこそソイナースは、多くの医療的ケア児とそのご家族に寄り添った小児訪問看護を提供しています。健やかな成長と楽しい日常を過ごせるよう支援することが、私達の使命でありやりがいです。
この記事を読んで、医療的ケア児の看護に興味を持った方はぜひ、小児訪問看護師を目指してみませんか?ご不明点、疑問点がございましたら、ぜひ公式LINEでお気軽にご相談ください。
※1 『医療的ケア児支援センター等の状況について(令和4年度 医療的ケア児の地域支援体制構築に係る担当者合同会議)』|厚生労働省